かなのにうらるのブログ

小説・・・のつもり

閉ざされた心と共に 14

「ロドス博士。
ミサさんって、悪い事をして喜ぶような人なの?
そうじゃ無いんでしょ。
だったら、今すぐに・・・」
エリーが、苦しそうに言った。
そのエリーの言葉を聞いて、ロドス博士の顔色が変わった。
「何も、何も知らないくせに、知ったような口をきくな。」
ロドス博士は、声を高くしてそう言うと、PSIシールド発生装置の出力を上げた。
「キャーッ、あっ、ああっ。」
エリーが悲鳴を上げ、とても苦しそうな声を出した。
「やめろーっ!」
俺はそう叫ぶと、ロドス博士に向かって突進した。
そして、思いっきり体当たりをした。
ロドス博士は、後ろに飛ばされ、尻餅を突いた。
「ぐふっ。。。」
そして、短く悲鳴を上げた。

俺はテーブルの上にあるナイフを取ると、そのままPSIシールド発生装置に向かって走り出した。
その俺の姿を見て、ロドス博士は、俺が何をしようとしているか理解したようだった。
「よせ、やめろ。」
ロドス博士は、大声でそう言ったが、まだ尻餅を突いたまま、動けないようだった。
俺は、PSIシールド発生装置の裏を覗き込んだ。
装置には、少し太いケーブルが1本と、電源用の黒いコードが1本繋がっていた。
電源用の黒いコードを少し引き出すと、それをナイフで思いっきり切った。
「バチ、バチバチバチバチ。」
電気がショートする音と同時に、青白い光が激しく光った。
そして、PSIシールド発生装置から、『ボン』という小さな爆発音が聞こえ、白煙が上がった。

「ハァ、ハァ、ハァ。
ヒロ、ありがとう。」
エリーが立ち上がりながら言った。
「ヒロさん、その隣にある箱を開けて下さい。」
ジョンが、立ち上がったエリーを支えながら言った。
「これだな。」
俺はジョンに言われた通り、PSIシールド発生装置の隣にある、箱を開いた。
中に、幾つかの基盤や線が見えた。
「そこに、黄色と赤色の線が、束になっている物があります。
その線を全て、ナイフで切って下さい。」
ジョンはそう言うと、少し嬉しそうな顔でエリーを見た。
「解った。」
俺は、ジョンを少し見て、そう言った。
「やめろ、やめるんだ。」
テーブルに両手を着き、立ち上がりながら、ロドス博士が大きな声で言った。
その声を無視して、俺は線の束をナイフで、思いっきり切った。
大きなコンピュータに点灯していた緑色のランプが、一斉に赤色になった。
そして、『ビー、ビー』といった、警報音が鳴り出した。
「何て事をしたんだ。
それは、コンピュータの電源ユニットの制御ケーブルなんだぞ。」
ロドス博士はそう言うと、俯き、右手でテーブルを叩いた。

「ヒロさん、ありがとう。
これで、このコンピュータに、電気は供給されなくなりました。
予備電源のバッテリーが付いてますが、30分もすれば、それも切れるでしょう。
そうすれば、このコンピュータは、完全に停止します。」
ジョンが、嬉しそうな顔で、俺を見ながら言った。
「ジョンくん。
このコンピュータが停止しても、本当に大丈夫なの?」
エリーが心配そうな顔で、ジョンを見ながら言った。
ジョンは、笑顔でエリーを見ると、首を横に振った。
「そう。。。
やっぱり、そうなのね。」
エリーは、悲しそうな顔でジョンを見ると、涙を流した。

「最後に、ミサさんにソックリなエリーさんに出会えて、とても嬉しかった。
その服は、ミサさんが、ぼくと一緒に出かけるときに、必ず着ていたんです。
だから、ぼくは、その服を着ている人が、大好きなんです。」
ジョンは強くそう言うと、エリーの両手を握った。
「ジョンくん。」
エリーはそう言って、ギュッとジョンを抱きしめた。
「ありがとう、エリーさん。
それじゃ、前に渡したデータを返してもらえますか。」
少しして、ジョンが言った。
「うん。」
返事をすると、エリーは薄いオレンジ色に光るデータを、ジョンに渡した。
「エリーさん、これでお別れです。
ヒロさんの、携帯端末に戻って下さい。」
ジョンが、笑顔で言った。
「うん。
ジョンくん、ありがとう。」
エリーがそう言うと、エリーのホログラフィが消えた。