かなのにうらるのブログ

小説・・・のつもり

秘石の誘い 11

「あっ、そうそう。
サナさんに、この指輪を渡しておくわね。」
シホはそう言うと、スーツのポケットから、青い石が付いた指輪を取出し、それをサナに渡した。
「綺麗な指輪ですね。」
「ホント、とっても綺麗。」
サナとケイは、シホが渡した指輪に付いている青い石を見ながら、目を輝かせて言った。
「その指輪とジローを、霊力で繋いでいるの。
だから、ジローはその指輪から、遠く離れる事はできないわ。」
シホが指輪を見ながら、サナとケイに言った。
「つまり、わたしたちが指輪を持って居れば、ジローはわたしたちから離れる事ができないんですね。」
サナは指輪を指にはめると、シホに聞いた。
「ええ、そうよ。
ということだから、ザグルス、逃げようとしても無駄よ。」
シホは熊の縫いぐるみのジローを見ながら、笑顔で言った。
それを聞いて、ザグルスはシホに背を向けたまま、不貞腐れたような態度で、右手を挙げると軽く振りながら、
「勝手にしろ。」
と言った。

それから、サナとケイとリョウ、そして、熊の縫いぐるみのジローに中に閉じ込められたザグルスの4人による、少し変わった学校生活が始まった。
「ケイ、おはよう。」
サナはケイと待ち合わせをしている、電車の駅のいつもの場所で、ケイに挨拶をした。
「おはよう。」
ケイが笑顔で、サナに挨拶をした。
そして、ケイの鞄に繋がれている熊の縫いぐるみのジローを見ながら、
「ジロー、おはよう。
元気?」
と笑顔で言った。
「ああ。」
ジローはプイと顔を横に背け、不貞腐れたような態度で言った。
そこへ、リョウがやって来た。
「よぉ、おはよう。」
リョウは軽く右手を挙げると、サナとケイを見ながら言った。
「おはよう。」
サナとケイが、笑顔でリョウに言った。
「ジロー、元気か?」
リョウも、サナの鞄に繋がれているジローを見ながら言った。
「ああ、元気だよ。」
そう言うと、ジローは少しため息を付いた。
(クソ、いつか、この忌々しい縫いぐるみから抜け出してやるからな。)
ザグルスはサナの鞄に繋がれ、揺られながら、学校へと向かう電車の中で、強くそう心に誓った。