かなのにうらるのブログ

小説・・・のつもり

閉ざされた心と共に 15

「ジョン。
何故、何故、お前まで、わしを置いて行くんだ。」
ロドス博士がジョンを見ながら、悲しそうな声で言った。
「博士。。。
ぼくは、研究熱心で、優しい博士が大好きなんです。
だから、もう、悪い事はしないで下さい。
そしたら、ぼくは、いつまでも博士の傍にいますから。」
ジョンは、笑顔で博士を見ながらそう言うと、持っている薄いオレンジ色のデータを開いた。
そして、そのデータをホログラフィにして映した。

「こんにちは、おチビちゃん。
あなたの名前は、ジョンよ。
今日から、わたしたち家族の一員になるの。
よろしくね。」
そう言ったのは、エリーにソックリな女性だった。
それが、ジョンとロドス博士が言っていた、ミサさんだと、直ぐに分かった。
「ジョン、散歩へ行くわよ。
ほら、慌てないで、リードを付けられないじゃない。」
笑顔でそう言うミサさんと、嬉しそうにはしゃぎ回る、黒と白の毛が混じった子犬が映し出された。
「ジョン。。。
ジョンは、犬だったのか。」
それを見て、俺は、驚いて言った。
「ああ、そうだ。
わしとミサとの間には、残念ながら子どもができなかった。
だから、ミサの希望で、犬を飼う事にしたんだ。
ジョンをコンピュータに繋いだ事によって、ジョンは、子ども並みの知能を持つようになったがな。」
ロドス博士は、映し出されているホログラフィを見ながら、悲しそうな顔で言った。
それからしばらく、楽しそうに遊ぶ、ジョンとミサさん、それにロドス博士の映像が映し出された。

「あなた、ゴメンなさい。
変な病気に感染してしまって。」
ミサさんが青白い顔でベッドに横になり、力ない笑顔でロドス博士と話しているシーンが映し出された。
「ミサ、謝らなくって良いんだ。
お前は、何も悪くない。」
「ありがとう。」
ミサさんが、力なく言った。
「悪いのは、お前に、こんな病気をうつした連中だ。
そんな連中を、野放しにしていた社会だ。
今、そいつらに、復讐する準備をしている。
だから、その復讐を見届けるまで、頑張れ。」
「ええ、頑張るわ。
でも、復讐なんてしないで。
わたしは、あなたと、ジョンと一緒に居られて、とても幸せだったわ。」
「ミサ。。。」
「ゴメンなさい、少し眠るわね。」

「わしは、今でも、そいつらや社会を許さない。
いや、ずっと許さない。」
ロドス博士は、そう言うと俯き、目に涙を浮かべ泣いた。
「あなた、大丈夫?」
突然、ジョンの隣に、ミサさんのホログラフィが現れた。
ミサさんは、笑顔でロドス博士を見つめていた。
「あれは、エリーなのか?」
そのホログラフィを見ながら、言った。
「ううん、わたしじゃ無いわ。
わたしは、こっちに居るもの。」
俺の携帯端末から、エリーの声が聞こえた。
「ミサ。。。」
「あなた、今の研究を続けて。
そうすれば、また、あなたと会うことができるわ。」
ミサさんが笑顔で、優しくロドス博士に言った。
「ミサ、お願いだ。
ずっと傍に居てくれ。」
ロドス博士が、泣きながら言った。
「わたしは、ずっと傍に居るわ。
けど、あなたが気付けないだけなの。」
ミサさんが、少し悲しそうな顔で言った。
「じゃあ、わしの研究が完成したら。」
「また、あなたと会えるわ。
だから、その研究を続けて。
あなたと会える日を、楽しみにしているわ。」
そう言うと、ミサさんの姿が、ゆっくりと消えて行った。
気が付くと、ジョンのホログラフィも消え、大きなコンピュータは、完全に停止していた。