かなのにうらるのブログ

小説・・・のつもり

秘石の誘い 3

「いや、忘れ物じゃない。
二人に、忠告しに来た。」
リョウが、淡々と言った。
「忠告?」
サナが緊張した顔で、聞き返した。
「ああ。
二人が今やってる、それな。
今すぐ止めた方が良い。」
リョウは、机の上に置いてある本を見ながら言った。
「この霊力を調べる方法のこと?」
サナが、ジッとリョウの顔を見ながら聞いた。
「それは、霊力を調べる方法なんかじゃ無い。
とても危険な事だ。」
リョウが、少し強く言うと、
「リョウくん、この本のこと、知ってるの?」
ケイが、興味深そうに聞いた。

「いや、その本のことは、まったく知らない。
だが、二人のことが、噂になってる。」
リョウは、サナとケイを見ながら、真剣な顔で言った。
「えっ、噂って?
誰が噂しているの?」
サナが少し心配そうに、リョウを見ながら聞いた。
サナもケイも、この霊力を調べる方法は、誰にも話したことがなかったのだ。
「この近所に居る霊たちさ。」
リョウは少し肩を窄め、二人を見ながら言った。
「霊たちが?」
ケイが驚いたように聞いた。
ケイもサナも、霊力を調べる方法を試しているが、実際に霊を見たことは無かった。
また、霊が存在するかどうかも、半信半疑だったのだ。
「ああ、二人がとても危険なことをしているってな。
だから、今すぐそれを止めるんだ。
でないと、とても後悔することになる。」
リョウはそう言って、二人をジッと見た。
「うっ、うん。
解った。
じゃあ、もうこれはしないよ。」
サナが真剣な顔で、リョウを見ながら言った。
「そうね、どれ位危険かは解らないけど、霊たちがそう言ってるのなら、止めた方が良さそうね。」
ケイも、サナを見ながら言った。
リョウが真剣に話す顔を見て、サナとケイは、リョウが嘘や冗談を言っているように思えなかったのだ。
「そうしてくれ。
その方が、俺も助かる。」
リョウが、少しホッとしたような顔で言った。
そして、少し笑顔になった。

「ひょっとして、リョウくんは、霊が見えるの?」
ケイが聞いた。
「ああ、ハッキリとな。」
リョウは、辛そうな顔をして言った。
「じゃあ、今も霊が見えてるの?」
サナが、興味深そうに聞いた。
「俺たちの守護霊はな。
しかし、他の霊たちは見えない。」
リョウが言った。
「えっ、どうして?」
サナが不思議そうに聞いた。
「他の霊たちは、二人がしていることを恐れて、みんなこの学校から離れてる。」
リョウが、サナを見ながら言った。
「わたしたちがしていることって、そんなに危険なことなのね。」
ケイが言った。
「ああ。
だから、もう、絶対にするな。」
リョウはそう言うと、教室から出て行った。
それから少しして、サナとケイも帰路に着いた。
結局、その日は、2人とも霊力を試す練習はしなかった。